※ここで述べていることはあくまでも私自身が感じた個人的な意見で一般論ではありません。少しでもお役にたてば幸いです。またここで紹介しているクリッピングパス機能はPhotoshop Limited Edition 等に機能限定版には付属していません。Photoshop 5J、6J、7J等の正規版に付属していますが、画像のコピー&ペーストができれば同様のことが可能かと思われます。

<エラーの少ないシェード解析方法>

よく患者さんに直接会ってシェードを取ったにもかかわらずポーセレンを色が合わないという話をよく聞きます。実際に写真を撮ってラボサイドで見ながら補綴物を作成しても同じ状況でエラーが起こってしまいます。

そのエラーの1番の原因は患者さんの天然歯のほうはピンク色(赤)の歯周組織に囲まれているため、目の錯覚で天然歯のピンク色が見えない状況に陥ってしまい、その反対色の緑色がかって見えてしまいます。特に歯周組織に近い歯頚部はその傾向が顕著です。故にその緑色がかったように見える天然歯とシェードガイドと同じ色と判断して補綴物を製作してしまい、患者さんにセットした時に暗い緑色がかったポーセレンになってしまいます。

色を計測する器械がありますが、肝心な歯頚部付近の計測は難しいようですし、ガミー等も歯冠全体のベースの色は取れますが、やはり多くの色情報が溢れている口腔内では歯の細部の色の確認は難しいものです。

ここで紹介する画像処理は難易度が高く、かなり難しい処理ですが習得すると直接口腔内でシェードを取るより、はるかに正確に色の錯覚なしに頭の中に色イメージを再現できます。そんなに難しい築盛方法をしなくても、他の天然歯にマッチした補綴物を作成可能です。ということは患者さんの前でこんな色だろうか?と考えながら無駄なシェードテイク時間を費やすこともなくなり、また時間が経過して歯が乾燥して色が変わってしまうことも防げます。

自分で、もしくはドクターサイドで撮影をマニュアル化して迅速に撮影を済ませ、ラボサイドに画像データを持ち帰り、これからご説明する画像処理を行えば色々な色が見えてきます!


シェードを取ろうとする対象歯が歯周のピンク色(赤)に囲まれるとその中のピンク色が錯覚で見えなくなり反対色である緑っぽく見えてしまう

その緑っぽく見えている対象歯にシェードを合わせてしまい、実際に作成した補綴物は口腔内で緑っぽく、暗い歯になってしまう

 

<口腔内での画像撮影時の注意>

1.患者さんがユニットに座って口を開けた瞬間から天然歯は乾燥して、正確な色の取得は難しくなります。可能であればユニットに座って口を開けてから5分以内に撮影を終えていることが望ましいと思います。

2.フラッシュが反射して白飛びを起こすと画像処理が難しくなってしまいます。フラッシュを調節する、カメラの角度を変えてできる限り白飛びは起こさないように気を付けて下さい。露出アンダーぎみの暗めの画像のほうが後で画像処理のときに正常な明るさに戻しやすいです。

3.天然歯とシェードガイドのフラッシュもしくカメラのレンズからの距離を等距離で、重ならない範囲で近い位置に置いて撮影してください。距離が違うと近いほうの対象物は明るい色になり画像処理したときに比較の対象にならなくなってしまいます。

      →なぜ色が変わってしまう?

<クリッピングパスによる画像処理方法>

クリッピングパスとは DTP(印刷)でよく使われるツールで、よく見かける雑誌等の商品の絵(画像)はスタジオ撮影した画像データをクリッピングパスで切り取り、影などを付けてレイアウト、印刷したものです。操作自体は多少煩雑で難しいのですが、画像を自由にとてもきれいに切り抜くことができDTPでは必須の技術です。

右上1、2番補綴予定でのシェード取得画像を先生からいただきました。

まず対象となる画像を開きます。

このままシェードを取るとベースは左端のガイドの「A2」よりやや明るい「A1.5」というところでしょうか?

左にあるツールの中のペンツールをクリックして選択します。

歯の外形よりほんの僅かに内側をクリッピングパスでトレースしていきます。

ペンツールの操作方法は説明書等を参考にしてください。ここでは割愛させていただきます。

コピーする歯の外形をトレースしてきたら最初の点(アンカーポイント)にペンツールを重ねるとペンの右下に0マークが現れます。

現れたところでクリックすると歯の外形をトレースした1周の線(クローズドパス)になります。

右下のパレットの中の「パス」を表示します。

パスのパレットを開いたままでパレット右上の右三角ボタンを開き、その中の「選択範囲を作成」を選びます。

選択範囲を作成画面が表示されますのでぼかしの半径「0」のままOKボタンを押します。

アンチエイリアスのチェックは入れても入れなくてもどちらでも構いません。

先程トレースしたパスの上に選択範囲を表示している点線が現れます。

選択範囲の点線ができましたらトレースしたパスは必要ありませんので先程のパスのパレットで「作業用パス」を選択しておいてパレット右下のゴミ箱ボタンをクリックして削除してください。

パスパレットの右下のゴミ箱ボタンをクリックして確認画面で「はい」を押します。

そうするとトレースしたパスは消えて選択範囲の点線のみ残ります。

右図のように「レイヤー」パレットを開いて、元画面(背景)を選択して反転しているのを確認してから、上のメニューの「編集」→「コピー」を選択して選択した範囲のコピーをします。

コピーを選択したら、今度は左図の「編集」→「ペースト」を選びます。

そうすると選択範囲がコピー、貼り付けされ、自動的にレイヤーが増えてそこに選択範囲が貼り付けされます。

ここでは上記作業を繰り返し、シェードを取りたい天然歯、シェードガイド、今度作成しなおす補綴物を同様に選択範囲作成、コピー、ペーストを選択して3つのレイヤーができました。

比較確認したい天然歯、ガイドの複製が終わりましたらグレーのレイヤーを作りますので元画像(背景)を選択して、したの赤丸の新規レイヤーボタンを押して新しくレイヤーを作ります。

※選択範囲を作成してコピーする場合、必ずどのレイヤーをコピーするかレイヤーパレットで選択してからコピーしてください。 目玉マークをクリックすると、そのレイヤーを表示、非表示にできます。

新しくレイヤーが作成されて選択された状態になりますので、上のメニューの「編集」→「塗りつぶし」を選択します。

塗りつぶし画面で内容:使用を「50%グレー」を選択して、不透明度は「100%」のまま、描画モード通常でOKボタンを押します。

塗りつぶす色はRGB値が同じ値のニュートラルな色であるグレーが最適だと思います。また使用を描画色にして60%グレーにすることも可能です。
描画色での塗りつぶしはPhotoShopの説明書を参照してください。

塗りつぶしが終わるとこのような画面になります。

この段階でも患者さんの口腔内にセットされていたポーセレンはシェードガイドを元に作成されていて、特に歯頚部付近の赤みが足らず、歯冠中央部の明るさも足らないことがわかります。

またレイヤーパレットでコピーしたレイヤーを自由に拡大、縮小、回転できる自由変形ツールもあります。

回転、移動したいレイヤーを選択して「編集」→「自由変形」を選択します。
上下左右の□をマウスでつかんでドラッグすると自由に拡大、縮小でき、また四隅に矢印に変わった時につかんで回転、また画像をドラッグして好きな位置に移動できます。確定するには対象物をダブルクリックすると確定できます。

シェードガイドのレイヤーを回転、移動して天然歯の横に配置しました。

一見、A2のシェードガイドと合っているように見えても対象物のみをニュートラルなグレーの上に置いてあげると全く違う色になってしまいます。

もしA2に合わせて補綴物を作成したら歯冠中央は緑っぽい暗くなり、歯頚部は赤みや色の濃さが足らなく浮き上がったポーセレンになっていたでしょう。

 

左の画像では左上の1番の歯頚部と左端のカラーガイドと合っているように見えますが同じように画像処理すると・・・

 

またPhotoshopならシェードガイドを半分に切って対象歯の半分に貼り付けることも可能です。

※JPEGでホームページ用に圧縮をかけたらブロックノイズが出て見にくいですが、パソコン上ではきれいな画像でもっと細部の色を見ることができます。

 

ここで患者さんの口腔内と同じ色環境に画像補正できると理想的ですが、画像補正に何十万、何百万円投資している印刷業界でもパソコンの画面と印刷物である反射原稿を同じ色合いにすることはとても難しいことなのです。重要なことはシェードを取ろうとする対象歯がシェードガイドの色と合っているのか、もし合っていないなら、どのくらい、どの色にシフトしているのかだと思います。そのために対象歯と一緒に撮影するシェードガイドやカラーガイドは多いほうが後に比較対照しやすいです。あとはある程度経験を積めば、エラーはかなりの割合で減っていくと思います。

 

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